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 厭離穢土欣求浄土(おんりえどごんぐじょうど。「えんりえど」とも読む)。

 皆さんもこの八文字を、「関ヶ原の戦い」などの戦場を扱った漫画、アニメ、映画やドラマで、徳川軍が旗印・馬印にしているのをしばしば見ているはずです。

 これは、「極楽浄土に往生する(生まれ変わる)ことを心から願い求めること」という意味で、浄土宗で使われる「信ずる者への救いの道」つまりは「篤(あつ)く信ずれば、来世では幸せの世界が待っている」という教えですね。

 古くは、源信(942~1017年)の『往生要集』の冒頭にこの言葉が書かれています。浄土教の根底思想です。

 「私たちが住むこの世界は苦悩に満ちた穢れた世であり国土であり、それを厭(いと)い離れることを願うことであり、心からよろこんで浄土に生まれることをねがい求める」と浄土真宗本願寺派布教使であり、龍谷大学講師の西光義秀さんはご自分のウエブサイトで分かりやすく解釈されています。

 この言葉が徳川軍に使われた背景には、桶狭間の戦いで〝敗軍の将〟として生き延びた当時満17歳の松平元康(後の家康公)の姿があります。

 織田軍の追っ手を振り払い、故郷岡崎の菩提寺・大樹寺に逃げ込んだものの門の外には追ってきた敵軍が気勢を上げていました。「もはやこれまで」と観念した元康は先祖代々の墓所の前で自害しようとします。

【当時、有力武将の首級、特に兜を付けた兜首は価値が高く、下級武士は戦場で名の知れた部将を探し回りました。逆に部将は自分の首を取られることを最大の恥と考えていたのです。ですから、元康が、雑兵に首を取られるくらいなら自分の家臣に介錯(斬首)させて敵に分からない所に埋めさせた方がまし、と考えたとしても不思議ではありません】

 するとそこへ寺から出てきた登誉(とうよ)上人が「代々松平家は平和な世の中を創ろうとしてきた。その想いをあなたは断ち切るのか?」といさめ「厭離穢土・欣求浄土」を授け、平和国家建設にまい進するよう励ましたと言われています。

 その言葉に勇気づけられた元康は〝生まれ変わり〟、墓前に大願成就を誓ったそうです。そしてそれからは、いくさ場に八文字の書かれた旗印を掲げ、「天下泰平」と記した軍配を振るって天下を取ったのです。

*この若き家康公を奮い立たせた『厭離穢土欣求浄土』を世の中に広めるために、Tシャツなどをリターン品として作る予定です。それを実現するためにも一人でも多くのクラウドファンディングへの支援を必要としています。ご支援のほどよろしくお願い致します。