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ゼレンスキーは巨象に向かうアリ?
ロシア軍の侵略を受けて立つウクライナのゼレンスキー大統領。
力強い弁舌と揺るぎない政治姿勢は世界の多くの人の心を打ち続けます。
敵(かな)うはずがないのに、それに屈することなく最強軍団を相手に頑張っている姿は皆さんのハートを鷲掴みにしているはずです。その姿は、まるで巨ゾウに立ち向かうアリ。
でも、その一方で何か不可解な思いが頭をよぎりませんか?プーティン大統領がヒトラーに匹敵する人類最悪の独裁者と言われても何となく納得できない自分がいませんか?
それはおそらく報道などである程度国際政治に接してきたあなたなら当然持つ感覚だと私は考えます。
1980年~90年代に共産主義圏が混乱の中で崩壊し、ワルシャワ条約というNATOに対抗していた軍事同盟が解体されて四分五裂した後、ドミノ現象で東ヨーロッパ諸国の政治色が「赤(共産主義)から白(民主主義)」に一挙に変わっていく中で、〝約束と違うだろう!〟と20年余ゴルバチョフ、エリツィン、そしてプーティンといったロシアの歴代指導者が叫び続けてきた声が皆さんの意識の中におぼろげながら(失礼!)残っているのではないかと思います。それが「心の声」として語りかけているのではないでしょうか。
彼らが言う「約束」とは、大きく分けて5つあります。
それらをうまくまとめているサイトがあったのでここに紹介しておきます。
独統一の際、NATO東方不拡大の約束はあったのか(NEWS SOCRA、2022年1月25日)
サイトの著者は、記事の紹介にあるように、長年ソ連・ロシアを研究してきた元日本経済新聞のモスクワ支局長です。
ここには詳しく書かれていませんが、90年代半ば旧共産主義諸国がNATOに入りたいと言い出し、97年5月にクリントン米大統領が中心になってロシア側と作った「平和のためのパートナーシップFounding Act(創設協定)」を忘れてはなりません。これは「東欧がNATOに入るのはロシアの合意が条件」という主旨のものです。
当時はとても高い評価を受けた取り決めでしたが、1年後、不倫騒動で窮地に追い込まれたクリントン氏がそれどころでなくなり、対ロ交渉の舞台裏で行った口約束を、言を左右にして自己防衛に入ったため骨抜きにしてしまったのです。
その後、旧共産主義国家は相次いでNATO入り。その数は14に上り、NATO加盟国の約半分(30分の14)にまでなりました。ロシアがNATOに事実上〝丸裸〟にされたとあわてても時すでに遅し。大勢は決したのです。
そうなるとロシアにとってウクライナは死守しなければならない最後の防衛線。ウクライナがNATO入りして、ここにミサイル基地を造られれば、のど元にナイフを突き付けられたも同然。
そのように危機感を募らせたロシア側が安全保障の担保をNATO側に要求し続けているのは当然と言えば当然ですね。
ざっくりしたまとめ方ですが、以上このような背景が皆さんの「腑に落ちない思い」に影響したのではないかと思い、取り急ぎ書いてみました。