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2022.04.17 (Sun)  22:48

防衛研究所は講師派遣所?

 今回のウクライナ戦争報道、特にTVでやたら目立つのが #防衛省防衛研究所 研究員の解説。皆さんはほとんど気が付かないでしょうが、何人もが入れ替わり立ち代り各局で解説しています。これはTV業界の友人(複数)の話だと防衛省からのある種の〝働きかけ〟があったからだそうです。具体的には、記者クラブの記者たちに防衛省の広報から「解説者候補リスト」が渡されたり、個別に声掛けがあったとのこと。

 友人のひとりは「戦場ジャーナリストの中には問題発言をしたり、いい加減な分析をする人もいますからね。それに比べると、防衛研究所の方たちの解説は安定していて、安心して出演させられるんですよ」と言います。  確かに、専門家と言われる人たちの中には、勉強不足からくるいい加減な解説をする者がいます。「本当に現場を知っているの?」「政治の基本も分かっていないじゃないか!」と言いたくなる人もいます。

 そんな人たちに比べれば、防衛研究所の皆さんの解説は確かに安定しています。知識も豊富です。

 それはそうです。国家公務員である彼らはそれを仕事にして日夜勤しんでいるからです。

 

 しかし、そこに私は二つの面で不安を感じます。

 まず、防衛省の姿勢です。防衛省の本分は国の安全保障の精度を常に最高のレヴェルに高めておくことです。その一翼を担う研究所は研究に集中することが求められます。研究員たちは研究に専念すべきであって、それを広報するのは彼らの任務ではありません。

 同研究所は、研究業務の他に国際交流や情報発信を任務としています。しかし、それらの業務、任務はしかるべき広報担当の人物に分担されるべきです。つまり、研究業務を担う人に、交流事業や情報発信などに関わらせるのはどうかと思うのです。 それに、このように国の安全保障の根幹に関わる人がTVに露出して顔を広く知られるのは、明らかに国益を損ないます。外国の諜報員の餌食になる可能性があるからです。

 また、メディアも「使い勝手が良い」、「解説が安定している」からといってそれに安易に依存するのは危険です。 確かに同研究所の研究員の解説の内容は安定していますが「金太郎あめ」のように同じ内容の話が多く、そういう解説ならば大学や他のシンクタンクに所属する職員でもこなせます。メディアに求められるのは、問題の本質を多角的にとらえて分かりやすく問題を絵解きしてくれる解説者を探してくることです。政府からの働きかけがあるからといってそこに安易に乗るのではなく、メディアらしく多角的に解説するコメンテーターを起用すべきです。