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戦争という現実
スーパー住職逝く
「毎日早朝、ホームレスの人に炊き出しをしているお坊さんがいます。会ってみませんか?」
私たちがまだ「山の上」に住んでいる頃ですから10年近く前のことでした。そんな知人の誘いである日の早朝、名鉄東岡崎駅北口にある駐車スペースに行きました。
「ハイハイ、たっぷり食べてくださいよ。温まりますからね」「食べてくれてありがとう」「来てくれてありがとうね」「またあしたも来てください」「今日はコーヒーもどうぞ飲んでってね」
そう言いながら、どんぶりにおじやを大盛りにして渡している人は真冬だというのに薄着で、しかも裸足です。ひと段落着くとお坊さんは、別の場所へと姿を消しました。
それまでにも沢山のヴォランティア活動に接して来ましたが、「朝4時起き」「365日毎日」「(差し入れはあるものの)自腹で」「単独で」という言葉に〝胡散臭さ〟を感じてその後何度か約束せずに現場に行ってみました。
何度行っても目に入ってくる光景は同じです。彼独特の要支援者への優しい接し方は変わりませんでした。
それ以来、何かと会う機会が増えて私たちが5年前に開いたカフェにもしばしば顔を出されました。
その名は伊藤三学。若い頃は画家を目指したこと。様々な職業を経て僧門に入られたこと。そのきっかけが娘さんの死であったこと等など…話しを聞くうちに失礼ながら「本物」であることが分かりました。
今年に入ってから「しばらく姿を見てないな」と思い、携帯に電話を入れてみました。
いつもの元気な声でしたが、「ガンになってしまいました。でも元気ですよ♪」と言われるのでその言葉を真に受けて「また近くお会いしましょう。息子とその内(現場に)行きますね」と言って電話を切りました。
しかし昨日、Facebookで杉浦コウメイさんが書かれていた訃報を見て三学さんがもうこの世の人ではないことを知りました。三学さんの携帯電話を鳴らすと、奥様が電話に出られました。
2月27日に亡くなられていたことがわかりました。昨年12月に倒れられて、入退院を繰り返していたそうです。僕が最後に電話を入れた時も、退院したばかりのようで「そんな話し方をしていたのですね。炊き出しができるような病状ではありませんでした」との事でした。
明日、一家3人で里山にある三学さんのお寺(本当に貧乏寺です。勿論良い意味です)へ行って最後のお別れをしてこようと思います。合掌。
【慈しみに満ちた三学さんの微笑みが感じられて、この絵を描かれたコウメイさんにお願いして掲載しました。タイトルにスーパーを入れたのは、超人的という意味もありますが、支援者からいただいたスーパーマンの衣装が気に入り、現場で着ておられたからです】
ゼレンスキーは巨象に向かうアリ?
ロシア軍の侵略を受けて立つウクライナのゼレンスキー大統領。
力強い弁舌と揺るぎない政治姿勢は世界の多くの人の心を打ち続けます。
敵(かな)うはずがないのに、それに屈することなく最強軍団を相手に頑張っている姿は皆さんのハートを鷲掴みにしているはずです。その姿は、まるで巨ゾウに立ち向かうアリ。
でも、その一方で何か不可解な思いが頭をよぎりませんか?プーティン大統領がヒトラーに匹敵する人類最悪の独裁者と言われても何となく納得できない自分がいませんか?
それはおそらく報道などである程度国際政治に接してきたあなたなら当然持つ感覚だと私は考えます。
1980年~90年代に共産主義圏が混乱の中で崩壊し、ワルシャワ条約というNATOに対抗していた軍事同盟が解体されて四分五裂した後、ドミノ現象で東ヨーロッパ諸国の政治色が「赤(共産主義)から白(民主主義)」に一挙に変わっていく中で、〝約束と違うだろう!〟と20年余ゴルバチョフ、エリツィン、そしてプーティンといったロシアの歴代指導者が叫び続けてきた声が皆さんの意識の中におぼろげながら(失礼!)残っているのではないかと思います。それが「心の声」として語りかけているのではないでしょうか。
彼らが言う「約束」とは、大きく分けて5つあります。
それらをうまくまとめているサイトがあったのでここに紹介しておきます。
独統一の際、NATO東方不拡大の約束はあったのか(NEWS SOCRA、2022年1月25日)
サイトの著者は、記事の紹介にあるように、長年ソ連・ロシアを研究してきた元日本経済新聞のモスクワ支局長です。
ここには詳しく書かれていませんが、90年代半ば旧共産主義諸国がNATOに入りたいと言い出し、97年5月にクリントン米大統領が中心になってロシア側と作った「平和のためのパートナーシップFounding Act(創設協定)」を忘れてはなりません。これは「東欧がNATOに入るのはロシアの合意が条件」という主旨のものです。
当時はとても高い評価を受けた取り決めでしたが、1年後、不倫騒動で窮地に追い込まれたクリントン氏がそれどころでなくなり、対ロ交渉の舞台裏で行った口約束を、言を左右にして自己防衛に入ったため骨抜きにしてしまったのです。
その後、旧共産主義国家は相次いでNATO入り。その数は14に上り、NATO加盟国の約半分(30分の14)にまでなりました。ロシアがNATOに事実上〝丸裸〟にされたとあわてても時すでに遅し。大勢は決したのです。
そうなるとロシアにとってウクライナは死守しなければならない最後の防衛線。ウクライナがNATO入りして、ここにミサイル基地を造られれば、のど元にナイフを突き付けられたも同然。
そのように危機感を募らせたロシア側が安全保障の担保をNATO側に要求し続けているのは当然と言えば当然ですね。
ざっくりしたまとめ方ですが、以上このような背景が皆さんの「腑に落ちない思い」に影響したのではないかと思い、取り急ぎ書いてみました。